転職しようと決めたとき、まず最初に「いつ会社を辞めるか」というタイミングを考える人もいることでしょう。
こういう真面目で慎重な人ほど、上司が言う「繁忙期の退職はやめてくれよ」という言葉や転職サイトなどで見かける「会社を辞めるなら繁忙期は避けて、閑散期を選ぶべきです」という言葉に縛られるのですから皮肉なものです。
あなたは転職者が最も多い時期をご存知ですか?実は12月末と3月末なのです。
この2つの時期に共通しているのは、業種や業界を問わずたいていの企業が繁忙期を迎えているということ。年末を迎える12月末は、小売業も製造業も運送業もどこもかしこも大忙しです。そして3月末は年度末を迎えることから、やはりほとんどの企業が繁忙期を迎えています。
転職者の多くが、退職のタイミングにこの繁忙期を選ぶ理由はちゃんとあります。
まず12月末に退職をする人の場合、転職活動を開始する時期と求人情報が多い時期がちょうど重なるのです。転職活動にかかる期間は2~3か月間が平均とされています。そして12月の2か月前にあたる10月こそが、求人情報が特に多い時期なのです。
誰だって豊富な求人から自分に合った仕事を見つけたいと思いますよね。
3月末に退職する人が多い理由は、年度の開始に新しい職場でのキャリアのスタートを切ることができるからです。4月から新生活を始める人は多く、社会全体が前向きな雰囲気に包まれているのも転職希望者を後押ししてくれます。
それにもかかわらず、繁忙期に退職するのは迷惑かもしれないと遠慮するのは損だと思いませんか?まだ決意ができないという人のために、さらに繁忙期でも退職をお勧めする理由を説明しましょう。
繁忙期でも会社を辞められる理由
「繁忙期に退職してはいけない」という言葉に縛られている人のために、客観的な視点から繁忙期に退職しても問題ない理由を4つ説明します。繁忙期に会社を辞められないと決めつけている人ほど、目から鱗が落ちるかもしれません。
会社は辞めたい時に辞められる
そもそも会社というのは、いつ辞めても良いものなのです。退職する際に閑散期まで待たなければいけないという決まりは、どこにも存在しません。
ここで言う「期間の定め」とは、就業規則を指します。就業規則を確認すると、たいていの会社は1か月前までに退社の旨を申し出ることと書かれています。
ここで「繁忙期に退職を申し出ないこと」と書かれていたら辞められませんが、そこまで労働者を縛り付ける就業規則を定める会社はほぼ間違いなく存在しません。あったら大問題でしょう。
あなたの会社の就業規則を確認してみましょう。そこに2週間前や1か月前までに退社を申し出ることと書かれていたら、それさえ守れば繁忙期に退職しても何ら問題はないのです。
繁忙期でも給料は大差ありません。繁忙期前に辞めるの賢明である
今すぐ辞めたいと思う会社は、たいてい待遇が悪いものです。繁忙期だろうが何だろうが、給料はさほど変わらないというケースがほとんどでしょう。
なぜ閑散期と大差ない給料で仕事量だけ増やされなければいけないのかと、不満に思いませんか?そう思うのが自然です。
繁忙期なので残業代は増えるかもしれませんが、それだけ時間や気力体力を犠牲にすることになります。快適な暮らしを手に入れるために働いて収入を得ているはずなのに、残業に縛られて家族と団らんする時間を奪われたり、趣味を楽しむ時間が取れなかったりしたら意味がありませんよね。
>>月80時間以上の残業は「普通」か「きつい」か?きついので転職しましょう
>>6連勤、7連勤は違法?過労で倒れる前にブラック企業は辞めろ
一方でしっかりした会社なら、繁忙期に社員のモチベーションを高めるために、しっかりとインセンティブを設けてくれます。頑張った分だけ給料に反映されるのですから、働き甲斐がありますね。
しかもインセンティブなら残業すれば増えるものではなく、あくまで仕事の結果によって反映されるので、就業時間だけしっかり頑張れば給料を増やすことができます。頑張って増やした給料で大きな買い物をしたり、趣味や旅行を楽しんだりできるので、ライフワークバランスも納得いくものになるでしょう。
だからこそ無駄に忙しいだけの会社は、繁忙期前に辞めてしまうのが賢明です。
ブラック企業には仕返しだろ!
深夜までの残業に早朝出勤、部下が忙しくしているのにフォローする気がない上司、足を引っ張る同僚など、辞めたいと思う会社はブラック企業としての要素をいくつも兼ね備えています。
>>毎日終電まで仕事するのは辛い!残業で終電まで働くリスク。残業代なしなら即転職
そんな会社で繁忙期を迎えたところで、「よく頑張ってくれたね」という労いの言葉ひとつさえもらえないことでしょう。こんな社員を蔑ろにする会社に、自分を犠牲にしてまで尽くす必要はありません。
繁忙期に辞められたら困る?そんな会社にしたのが悪いと開き直ってしまえば良いのです。
会社側は「あなた1人が辞めたところで業務に差支えはない」と、最初は強がるかもしれません。しかしブラック企業はその体質のせいで優秀な人材が定着していないため、人手不足と繁忙期が重なると業務がうまく回らなくなる可能性があります。
そうなって初めて、いかにあなたの貢献度が高かったかということが分かるのかもしれませんね。
今の職場の人間関係を気にすることはありません
繁忙期に退職を申し出ることで、職場の人間関係にヒビが入ったら嫌だと感じる人も少なくありません。しかし、冷静に考えてみましょう。
今の職場の人間関係、あなたの今後の人生に本当に必要でしょうか?
良い会社だったけどキャリアアップや起業のために退社した‥という場合であれば、退職後も前の職場の人との関係を良好に保つ価値はあるでしょう。
しかし不満がたくさんあって、今すぐにでも辞めたいと思う会社に退職後も付き合いたいと思える人はほとんどいないはずです。
仮に個人的に付き合いたいと思えるほど親しい人がいるとしたら、その人は繁忙期に辞めようが閑散期に辞めようが、あなた自身を好きでいてくれるので付き合いを続けてくれるでしょう。それだけで充分ではないでしょうか。
確かに繁忙期に退職したい旨を伝えると、退職までの期間は職場でピリピリとした人間関係を味わうかもしれません。しかしそれも一時的なもの。そこさえ乗り越えてしまえば、彼らとは金輪際会うことがありませんし、快適な職場での仕事が待っています。
退職や転職を望むときに、今の職場の人間関係を気にする必要はないのです。
「辞める!」と言えない人は感情の力を借りる
客観的に見て、繁忙期の退職は問題ないと分かっても、いざ自分の問題となると切り出しにくい‥そんな人もいることでしょう。
しかしそれは今、仕事を離れているからそう思えるだけではないでしょうか?なかなか「辞める!」と言い出せない人のために、感情の力を借りて退職する方法を説明します。
業務中のイライラがピークに達したときに退職を伝える
会社では、上司の理不尽な説教や膨大な仕事量など、イライラさせる瞬間が多々あります。このイライラがピークに達した瞬間こそが、退職を伝えるチャンスです。
>>仕事中にイライラして辞めたい人!イライラの解消法
いっそのこと、感情が高ぶった瞬間に「会社を辞めます」と、上司に言ってしまいましょう。
言った直後は一瞬、「一時の感情でとんでもないことを言ってしまった」と思うかもしれません。普段は怒りや不満を表に出さない温厚な人ほど、後悔の念が強くなることでしょう。
しかしそれは、本当にその瞬間だけ湧き上がってきた感情だったのでしょうか?むしろ、怒りや不満をぐっと押し殺してきた時間の方が長いのではないでしょうか。
そう、あなたは決して瞬間湯沸かし器のように怒りを沸騰させて「辞める!」と言ったわけではないのです。
例えるなら、あなたの心はコップに満タンの水がたまった状態で、あと1滴でも水が増えればあふれるくらいの状態にまで追い詰められていた‥そしてその瞬間が来たに過ぎないのです。決して感情的になり過ぎたと責める必要はありません。
朝の出勤前の憂鬱がピークに達したときに退職を伝える
会社を辞めたい人の多くは、憂鬱な朝を迎えています。それでも心を鬼にして満員の通勤電車に乗り、会社へ向かっているはずです。
しかしここで、「会社に行きたくない」という感情を優先させてしまうのもひとつの手段です。面と向かって会社を辞めたいと言えないのであれば、出勤前の段階で電話などを使って伝えてしまうのです。
ブラック企業ほど、「何を言ってるんだ!早く会社に来い」と怒られることでしょう。ここまで追い詰められたのであれば、次は出社拒否を選ぶという手段もあります。
正直なところ、出社拒否は社会人として褒められた行動ではないかもしれません。しかし、真面目で責任感が強く、仕事をバリバリとこなしていた人ほど出社拒否をしてしまう傾向があるのも事実です。
彼らは会社を優先させ過ぎたがために、自分の心身の健康を蔑ろにして、結局ぷつりと糸が切れた状態になってしまったのです。そして、そこまで彼らを追い詰めたのは会社にあります。
出社拒否をしたい、今すぐ会社を辞めたいと思っているあなたもこのくらい追い詰められている可能性があります。意図せず出社拒否をするような状態になったら、うつ病など本格的に心が病んでいる可能性があります。そうなったら、転職どころか社会復帰も難しくなることでしょう。
そうなるくらいなら、自分で自分を守る方が賢明です。
出社拒否は罰せられるの?
出社拒否をした場合、罰則を受けるのか気になる人もいることでしょう。出社拒否をした場合、2つのリスクがあります。それは「解雇」と「損賠賠償」です。
しかし、会社側が出社拒否をした社員を解雇するのは、決して容易ではありません。出社拒否をした人のためにこれだけ職場環境を改善した、これだけ社員を気にかけて連絡をしたといった、会社が社員を思いやったことを証明する実績が必要だからです。
しかしそれができる会社なら、そもそもここまで状況が悪くなる前に業務の見直しなど、フォローが入っていたことでしょう。そう考えると、会社側が解雇できるほどの実績を作れる可能性は低いと考えられます。
もうひとつ心配な「損害賠償」ですが、これもあなたが出社拒否をしたことでどれだけ会社が損をしたかを明確に示さないと請求できません。場合によっては裁判沙汰になり、費用がかかってマイナス収支になることから請求されないケースの方がほとんどです。
もちろん、あなたが過酷な環境で働かされていたといった事情も考慮されるので、会社の主張が一方的に正しいと認められることは稀でしょう。これは、先述の真面目で責任感が強い人ほど出社拒否をしてしまうといった背景も考慮されています。
このように出社拒否には全くリスクがないとは言い切れませんが、会社側も対処に困ることから、出社拒否して自宅から退職届の内容証明を送れば受け取ってもらえる可能性があります。面と向かって「辞める」と言ったときは「ダメ」だと言った上司も、こうなったら手のつけようがなくなるのです。
注意点!辞めるのはボーナスと有休は考慮すること
これまで解説してきた通り、繁忙期に退職することは問題ありませんが、自分のためにもボーナスと有休はしっかり考慮しておきましょう。
まず、ボーナスをもらってから退職を申し出るのは転職の鉄則です。ボーナスの支給が12月中旬ごろであるなら、退職を申し出るのは中旬以降~下旬ごろをおすすめします。
多くの場合、転職先の企業も「ボーナス貰ってから辞めますよね?」と気遣ってくれるので、焦って退職する必要はありません。
あわせて、残っている有給の日数と引き継ぎにかかる日数も確認しておきましょう。退職日を早めに設定して、なおかつ有休もすべて消化しようとしたら、引継ぎ期間が短くなり、ほかの社員に迷惑をかけることとなってしまいます。
先ほどの例で12月中旬ごろにボーナスが支給され、消化しきれていない有休も残っているなら、1月末以降に退職するのが賢明です。
会社によっては1か月以上の引継ぎ機関を設けるところもあるので、そうなると退職時期は2月末ごろがベストとなります。このようにボーナスと有休をしっかり考えた上で、計画を立てて退職時期を決めましょう。
万が一、転職先の入社日との兼ね合いで有休を消化しきれない場合は、新しい職場を優先させることをおすすめします。何より大切なのは、今の嫌な職場から解放されて、新しい職場でイキイキと働くことだからです。
入社時期や退社時期の交渉は2つの企業間で行うので、難しいところがあります。自分だけで対処するのは大変だという人は、転職エージェントを活用するのがおすすめです。
転職エージェントでは、自分に合った仕事を見つけられるだけでなく、コンサルタントが企業と直接やり取りをして退職日や入社日を決めてくれます。