看護師の補助というポジションの看護助手は、医師や看護師などと違って資格は必要ありません。そのためとても間口が広く、医療系という好イメージから飛びつく人も多いでしょう。
また景気に左右されにくい業界のためか、常に安定した求人数があることでも知られています。本当は別の理由からなのですが…。
患者さんのために存在しているのが病院ですから、そこで看護助手として働こうとする人は、人の役に立ちたいという前向きな気持ちと高いモチベーションで挑むのではないでしょうか。
しかしいざ中に入ってみると、求人に書かれている内容とは違う業務をさせられることの多い職種だという声も聞かれます。想像以上のハードさで離職率は30%超とも言われています。
人の命を預かる病院という世界は、医師にもっとも権限があるものの、それと同じくらい、いやそれ以上に強いのが看護師です。
そんな看護師たちと密に関わる看護助手という仕事は、多くの対応力を求められるため、よく知らないで看護助手を始めると、激務すぎて割に合わないと感じるかもしれません。
甘くはない看護助手の仕事
白衣や検査着などに身を包み、清潔で知的なイメージに見えるのに、看護師ほどの責任はないから看護助手は楽なポジションかもしれない!などと考えていたら大間違いです。
看護助手の仕事とはどんな内容でしょうか。看護師が使うアルコール綿や医療器具の準備、ガーゼ畳み、使用済み医療器具の滅菌消毒など看護師業務の補佐だけをしていればOKと思っていませんか?それらももちろん業務の中に含まれることはあります。
しかし実際には、勤める病院や診療科によって違いはありますが、医療資格がいらないギリギリのラインの中で、看護師がやりたくない仕事をそのままそっくり振られてしまうのです。
看護師が業務を終わって休憩に入っていても、看護助手はあらゆる雑事に追われてロクに休憩も取れないという状況になってしまいます。想像以上に甘くないのが看護助手の仕事です。
4階の病棟は二人しか看護助手いないのに、後輩が6月or7月で辞めちゃうらしい…二人でも大変な業務を一人でなんて絶対に無理だよ↓過労死してしまう(–;)
— みさ (@misa_w64) 2013年5月23日
どっかの病院で、過労で看護助手が倒れたってニュースが流れたら
それ、きっとわしです(・ω・)ノ
勤務改善および人手不足よ伝われ\(^p^)/— ぼたもち@鬱治療&妊娠中 (@ohagimochi1131) 2018年5月9日
看護助手のダメな所ー。
1、若い人は年代が合う人が居ない。
2、患者から看護師と勘違いされて、色々面倒。
3、給料安い。
4、仕事量多い。
5、助手だからと言って看護学校に有利な訳ではない。
6、ひたすら人間関係が面倒。
宗教誘われたりとか。
7、軽視される。
8、卑屈になる。— きき (@Tree_kiki09) 2017年2月18日
看護助手を辞めたい理由
総合病院などで病棟もあるとなると、看護助手でもその給料は19~28万円という高給が支払われるところもあります。しかし、なかなか長続きすることはむずかしい職種だと言われているのはなぜなのでしょうか。
人手不足による不十分な教育体制
看護助手の求人はいつの時代も良く見かけます。それだけ人手不足な職種だからです。人手不足で毎日ギリギリの状態で回しているため、業務を受け継ぐにも後輩を育てるための時間がありません。
そのため見て覚えてもらうしかないという状況になりがちで、先輩看護助手からの指導は満足に行えません。それなのに、仕事ができないとか使えないとキツく言われることも多く、精神的に追い詰められて辞めてしまう人が多いのです。
>>もう無理で嫌な仕事の「限界サイン」は見逃すな!仕事辞め時のサインとは?
看護師経由で仕事を教わることになる看護助手もいますが、その場合はさらに過酷です。病院の業務が稼働している中での教育になるため、教育期間はたったの1日だけというケースはザラなのです。
激務であるただの介護職と同じ
高齢化社会と言われる現代では、病院内でもおむつ交換や洗髪、お風呂介助などの介護職的な業務は増える一方です。注射や点滴などの看護師が行う医療行為は出来ない看護助手が、このような介護職的要素の高い仕事を頼まれることが多くなります。
つまり医療行為以外の仕事ではあるけれど、患者さんの体に直接触れることの多い看護助手の仕事は、経験のない人にはとても難しく過酷です。想像以上の重労働に、次の朝には起きられないほどの筋肉痛になっていたという声もよく聞かれます。
そうなると介護職で勤めたつもりはないのに…。という不満が出てくるでしょう。
その道20~30年というベテラン看護助手になると、それらも手早くこなしていきますが、次から次へとやることが目白押しで、優しく教えてくれる時間などはありません。
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看護師との人間関係に悩む
病院という職場環境は、事務職を含め圧倒的に女性中心です。そのため、人間関係がドロドロしていることでも知られています。ましてや、人間の命を預かる看護師は並大抵の人には務まりません。
まだ若い時代から、実習の時点から医師や先輩看護師、患者たちに、精神的にも肉体的にも虐げられて「医療現場とは、とても過酷なものだ」とある程度認識してから仕事を経験し、現在があるのです。
看護学校に入学すれば、誰でも看護師になって続けていけると思う人は多いものですが、実は看護師になれなかったり、なれても向いていないと挫折したりする人も多いのです。
それを乗り越えて看護師として成り立っている人は、圧倒的に気の強い人が多くなります。
同じ看護師ですら、産休などで現場を離れて、そのまま戻る自信が持てずにフェイドアウトしたり、勤務の楽な健診専門のクリニックなどに転職したり人もいるくらいです(汗)
そんな看護師と密接な関係の看護助手は、残念ながら相棒やパートナーという見方をしてもらえることは少ないのが現実です。
なぜなら、年数をかけて国家資格を取得し過酷な実習を乗り越えた看護師に対し、無資格の看護助手では、どこか上から見下したような態度になる看護師もいるでしょう。助手の仕事は看護師から見れば、どうしても易しいものにしか見えないからです。
さらに、看護師は病院の各科に複数人勤務しているのに対し、看護助手は1~3人程度の配置になるため、気に入らないとなると集団でいじめをされることもあるようです。看護師の業務を円滑に進めていくための補助業務がきちんとできない看護助手は、足手まといだからです。
そんな看護師との人間関係が辛過ぎると感じると、ますます仕事がスムーズに行えなくなってしまうでしょう。
夜勤の回数が多く忙しい職場
入院病棟のある病院の場合、看護助手も夜勤をしなくてはなりません。そのため、日勤の看護助手に比べると、給与面が高く設定されていることも多いのですが、専門職の看護師に比べたら、とても満足のいく金額とは言えません。
それどころか夜勤中の患者対応を、とりあえずは看護助手に対応させるという病院もあるのです。点滴に繋がれている状態になっている患者の体の清拭などを任されることなどもあり、とても神経を使います。
そうなると夜勤の間中、院内を動き回っているのは看護助手ばかりということになり「お金の問題でなく、もう辞めてしまいたい!」と考え始めるかもしれません。
夜勤の回数が多いと、昼夜逆転の生活というだけで体調管理が大変なのに、気の休まる暇のない職場環境では、精神的な健康面までも心配になってくるでしょう。
>>辛くしんどい夜勤のデメリット。介護、看護師、ホテル、工場などの夜勤はしんどいですよね
新人はすぐ辞め、離職率は高い
看護助手の仕事を続けている人を見ていると、いわゆるベテランと呼ばれる中高年の人が多いことに気づきます。それだけ長く続けられる職業だと考えることもできるのですが、中間層に当たる年齢の人が極端に少ないということが気になります。
つまり、新人が入って来てもすぐに辞めてしまうため、それが高い離職率の原因となっているのです。
そうなると世代が離れた者どうしで仕事をすることになり、仕事に対する感覚や考え方にズレが生じてきます。
言われなくても先輩の背中を見て、勝手に仕事を覚えてくれというベテラン看護助手は、看護師とのハードな人間関係も乗り越えてきたタフな精神力の持ち主なのです。
そのため物言いもキツイ人が多く、新人看護助手にとっては何も仕事を教えてくれないのに、ただキツく怒られるばかりで辛い、苦しいと感じてしまいます。怒られまいと萎縮するのでミスを繰り返し、余計に怒られると言う負のスパイラルにハマるでしょう。
仕事をなんとか覚えようとしても、まともに口もきいてくれなかったり、内部の人間関係も良くないので、人によって教え方が違ったりして混乱することも多いのです。
ベテラン看護助手と年齢が近く、ほかの求人での採用は期待できず、過酷な看護助手業務でも入れただけでありがたいと言うのであれば、我慢して居座ることも一つの方法かもしれません。
自分がベテランになるまで、そこで働き続けるメンタルと体の強さがあるならば、です。若いというだけでいじめられることがあるのは、なにも看護助手だけでなく女性が多い職場ではよくあることですが…。
>>メンタルを鍛える方法!仕事でメンタル弱いんだよね…と悩んでる人
しかし、まだ他の仕事に転職できる年齢ならば、なにもデメリット満載の看護助手という仕事に、あえてしがみつく必要はないのではないでしょうか。
仕事は看護助手だけではありません
看護助手の仕事はブラックなのでは?と思えるほど、精神的にも肉体的にもハードで離職率が高いことをお伝えしてきました。しかし、それだけ過酷な仕事を経験したということは決して無駄ではありません。
むしろ、看護助手という仕事を経験したことで、自分では意識していないうちに、たくさんのスキルが身に付いているのです。それには3つあります。
- 責任感
- コミュニケーション能力
- 体力
です。
責任感
医療現場という人の命を守るための過酷な環境に一度でも入ったあなたは、責任感が強い人です。気を抜いたり、ふざけたりしては仕事がなりたたない、看護師の側で働いていたのです。ピリピリとした緊張感は、転職を決めた今では思い出したくもないものかもしれませんが、そんな経験が新しい環境では「余裕」や「自信」へと繋がります。
コミュニケーション能力
患者さんを始め、医師、看護師などいろいろな年齢層や地位の人、物言いの厳しい人とも話す機会が多かったはずです。特に看護助手は具合の悪い状態の患者さんと直接かかわる場面が多いため、ほかの職種の人よりも空気を上手に読み、他人の変化に気づきやすいなどの対応力に優れているのです。
体力
介護職かと思われるほどの業務内容で、いつの間にか長時間の立ちっぱなし、動きっぱなしにも適応できる体に変化しつつあります。看護助手を始めたら忙しさと心労でぜい肉が取れ、引き締まって体が強くなったという人も多いのです。
次に、こんなスキルをいつの間にか自分のモノにしている看護助手に、おすすめの職種を紹介します。
看護助手を辞めたい人にオススメする転職先
看護助手を経験した人は、比較的いろいろな業種にマッチすると考えられるのですが、特におすすめしたいのは次の5つです。
- 医療事務
- 病棟クラーク
- 営業事務
- 介護職
- 接客業
異業種も含めた、おすすめの職業ついて簡単に紹介します。
医療事務
診療報酬明細書(レセプト)という書類を作成する仕事で、診察や使われた薬剤や保険などの点数計算が主な仕事です。窓口で受け付け業務をこなし、会計や予約の管理をすることも業務に含まれます。
レセプトの書き方などは、短期で通える専門学校や通信教育などで学ぶことができます。民間の資格ではありますが、病院によっては資格手当が付くところもあるようです。
同時に受付などの窓口業務も行うことが多く、病院に限らず歯科医院にも医療事務の仕事はあります。
病棟クラーク
病棟クラークは病棟に常駐して医師や看護師のサポートをする仕事です。事務的な作業やカルテ管理などを行い、看護助手同様看護師との接点は多いものの、患者さんへの説明業務など、事務員的な要素が強い仕事になります。
営業事務
営業事務は営業マンたちが社外で活動しやすく顧客への営業を円滑に行えて、利益につながるように、社内に居て事務作業をサポートする重要な職種です。
さまざまな営業職のサポートをする事務職になりますが、看護師をサポートしてきた経験を生かしやすい業種でしょう。
接客業
さらに異業種である接客業(サービス業)も看護助手を経験した人には向いていると言えるでしょう。患者への対応経験により、ものおじせずに人と接することができるため、とっつきやすい雰囲気がおのずと身に付いている人が多いからです。
介護職
看護助手の仕事に介護職の要素が多いことは前記しましたが、介護職専門として仕事をするとなると、経験を生かして仕事がしやすく感じられる場合があります。介護ヘルパーなどの資格を取って介護職の中でのスキルアップを目指すのもよいでしょう。
看護助手経験をバネにステップアップしよう
看護助手をこれ以上続けていくのは無理!と感じたら、ボロボロになって再起不能になるまで我慢する必要なんてありません。
むしろ看護助手をしたことによってメンタルも体も鍛えられたのだと考えて、さっさと他の仕事に転職することをおすすめします。
人間、劣悪な仕事環境を経験すればするほど、そこから抜け出して新しく始めた世界が平和に穏やかに見えるものです。
看護助手の経験は心と体の筋トレだったのだ、くらい前向きにとらえて、新しい一歩を踏み出してみませんか?