IT系の技術者から技術のわかる営業に転職しました。35歳を過ぎていましたし、かなり思い切った転職ではありましたが、結果としては大正解です。待遇、給与、仕事のやりがいなど、私にとってはあらゆる面で状況が良くなりました。
転職時に何を考え、どう動いたのか、実際に営業として働いてみてどうだったのかといった事について自分の振り返りを含めご紹介しています。
思い切った転職がしたいとお考えの人にとっては何かしら役立つ情報があるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。
専門職から技術のわかる営業へと転職しました
皆様はじめまして。IT系の技術者から技術のわかる営業職へ転身をした40歳(男)です。ちょっと珍しいキャリアパスですし、技術者からの転職を考えている人にとって何か参考になることもあろうかと筆をとりました。
都内にあります国立大学の理系出身です。修士課程を修了後、某大手IT企業に就職しました。そこで技術者として7年を過ごした後、より現場にコミットしたいとIT系コンサルティング会社へ転職。組み込み系のプログラム開発支援などに携わり5年が経過しました。
そんな経験を経まして、現在は営業職へと転身しました。これまでのキャリアを知る友人・知人に「営業をしている」というとかなり驚かれます。大学時代からITに関わり、技術者として過ごしていたイメージが強いはずですからまあ当然の反応です。
けれど、仕事の内容を詳細に説明しますと、「なるほど」という反応になるのも事実です。技術者から一体なぜ営業職へと転職したのか、続いてはその詳細についてご紹介してゆきたいと思います。
技術を理解している人材が不足しているので重宝がられる
営業と一口に言っても、商品によってそのスタイルは大きく異なります。私が販売している商品はかなりニッチな商品です。具体的に言いますと、大学や大手企業などに納品されるサーバーのパーツです。比較的重要なパーツで、性能にも関わってきます。
ですから、各種メーカーはその選択に慎重にならざるを得ないものです。とはいえ一般的な営業ですと、そこに使われている技術を完全に理解する事ができません。一方の私はと言えば、技術者としてそれなりのキャリアを過ごしておりますから、個別の案件に対して、最適と思われる解を導き出す事が可能です。
だからこそ、会社側には非常に重宝がられますし、クライアントの信頼も厚いものとなっています。営業という仕事自体は全くの初心者でしたが、それなりの業績も残していますし、働きだして1年後にはリーダーに抜擢されました。
営業職になって良かったこと3選
さて、営業職へ転職して以来、早くも3年目に突入しようとしています。これまで私が感じた営業職ならではのメリットについてご紹介してゆきたいと思います。
生活スタイルの改善
営業職に転職してまず感じたのが待遇の改善という事です。技術職ですと、開発状況によって残業は当たり前ですし、場合によっては休日出勤も必要となってきます。それが当たり前だと思っておりましたが、営業に転職した今では残業はほぼなくなりました。
そもそも、クライアントも企業ですからおかしな時間に連絡が来るという事はありません。また、何かトラブルが発生したとして、最終的には互いの会社の技術者同士でのやり取りです。営業職としてはただ見守るほかありません。もちろん多少のストレスは感じますが、当事者ではありませんから、気分はずいぶん楽なものです。
技術者時代に何かしらのトラブルがありますと、現場は騒然です。予期せぬ現象をすべて洗い出し、問題の原因を突き止めねばなりません。それを解決するまでは徹夜だって当たり前です。
問題を解決した後も大変です。クライアントへ報告するため、問題の本質を深堀しなくてはなりません。「なぜ」を5回繰り返すいわゆるなぜなぜ分析をしっかりと行い、再発防止策をしっかりと立案し(現実味のある案とするのがまた大変です…)、それを実行している証拠を提出しなくてはなりません。
友人と飲みに行く予定があろうが、家族旅行を企画していようが、トラブル発生時にはトラブルの解決を最優先とせざるをえなかったものです。
そういったハードな状況がほとんど起こらないというだけでも、営業に転職して良かったなと思います。もちろんトラブルが発生しないよう(なにせ技術者の大変さはイヤと言うほど知っていますから)、クライアントと綿密に打ち合わせるといった事は欠かしません。
残業も無くなりましたし、家族と過ごせる時間が増えた事はなによりうれしいものです。また、週末には趣味のフットサルを楽しんでおります。年齢も職場もバラバラのチームメンバーと話をすることは、思いがけない発見もあり、仕事にも役立っています。
フットサルへは息子もつれて行けるようになり、子供がサッカーの練習をしているのを(まだまだ危なっかしい感じですが…)眺めるのも楽しいものです。
なお、「営業と言えばノルマとか大変なんじゃないの?」と思われる人もいるかもしれませんが自社アイテムに関してノルマは全くありません。売れる相手は限られていますし、既存の顧客を大切にするというスタイルが基本となります。
営業して欲しいという相手からは問合せが来ますから、それに対応すればOKです。ニッチながらも確実に売れるという商材ならではの好条件です。
>>ルート営業(法人営業)は楽?きつい?ルート営業のメリットとデメリット
世界の広がりを感じられる
技術職ですと、世界はどうしても内向きになりがちです。マニアックにマニアックに突き詰めて、新たな商品を生み出すという日々でした。
営業職ですと、クライアント企業の技術者から営業職まで様々な人に会えるのも楽しみの一つです。時にはクライアントに同行し、クライアントのクライアントである企業や大学にお邪魔することもしばしばです。
これまで見えていなかった様々な世界や考え方、サーバーの思いがけない利用方法など、勉強になるものです。
また、自社の商品は海外企業でも使われています。ですから、海外からの問合せも多く、それに対応できるというのも魅力に感じています。もともと海外で働きたいという思いがありましたが、結婚を機に断念しておりました。
海外で働いているワケではありませんが、海外とのやり取りはなかなかに刺激的です。技術者時代には考えられなかった海外出張の機会も増え、今後はそちらの方向にシフトして行ければと英語の鍛錬を続けています。
英語の勉強が続けられるというのも、残業が少ない技術系営業ならではのメリットなのかもしれませんね。
待遇の改善
転職をする際、給与や福利厚生など、やはり気になりますよね。私の場合、収入は一時的に減りました。けれど、今では技術者時代の給与以上にもらえるようになりましたし、それでいて残業などもほとんどないのですから、かなり良いと言えます。
転職時には給与が下がることについて考える部分もありました。けれど「然るべき仕事をしていれば然るべき給与はついてくるだろう」という思いもありましたし、「しっかりと技術を理解して営業すればそれなりの成績はついてくるだろう」という自負もありました。
妻はと言いますと、給与が下がることよりも、家族と過ごす時間が増えそうという点を見ていたようです。何を言う事も無く、背中を押してくれました。かなりありがたかったです。
転職してすぐは色々と戸惑う事もありましたが、仕事にも慣れ、しっかりと仕事ができるようになった後、それなりの評価もついてきました。リーダーに抜擢された時点で前職の給与に並び、2年後には前職の給与を上回っております。
営業職ならではの大変さについて
続いては営業ならではの苦労についてご紹介してゆきたいと思います。技術のわかる営業を目指す人はぜひ参考にしてみてください。
話すべき内容を間違えると大変な事に
最初に苦労したのが「誰に何を話すべきかの見極め」です。当社の商品はマニアックなアイテムですし、クライアントの企業もそれを理解した上で取引をしています。
そういった事もありついつい「相手も自社製品についてかなり理解している」という前提で話を進めてしまう事が良くありました。
相手の技術者と話す場合であれば、もちろんそれでOKです。けれど経営陣と話す場合にはそうはゆきません。経理出身という人もいますし、経営の専門として雇われている人もいます。
彼らに対し、いきなりマニアックな話をしてしまいますと最悪な事態が訪れます。イライラした様子で「で、それがどうしたの?」という反応となり、まともに話を聞いてくれなくなってしまいます。彼らにとって知りたい情報はそこではないからです。
それを理解するまでに、何度危ない橋を渡ったでしょうか…。今では「相手が何を知りたいと思っているのか」、しっかりと見極めつつ話をするようにしています。それでも予想外の反応になることもあり、臨機応変の対応力が求められます。
相手が気付いていない要望を見つけなくてはならない
営業とはいえ、既存のアイテムを売りに行くというスタイルではありません(もちろんそれもありますが)。
それよりもむしろ、クライアントと話し、どこに新たな需要があるのかを掘り起こさなくてはなりません。「こんなことができると良いなぁ」という話に対応するのはもちろんなのですが、それだけでは不十分です。
話の中でクライアントの頭の中にあるモヤモヤを自分なりに理解し、自分なりのソリューションを生み出し、それを提案してこそ、次につながってゆきます。
とはいえ、これがなかなか難しいというのもまた事実です。これまで提案したもののうち、あたっていたものは1割に満たないかもしれません。それでも当たった時のインパクトは抜群です。以降は何かしら相談事があるたびに連絡をくれるようになります。
海外とのやり取りは驚きの連続
海外のクライアントも多いので彼らとのやり取りをするのはそれなりに楽しいものです。けれど、やり取りをするたびに驚かされる事があります。
日本であれば、担当者が変わる場合には引継ぎの連絡がありますよね。一方で海外の場合、何の連絡もないままいつのまにか担当者が退職しているなんて事も…。
私がそれに気づいたのはSNS上の投稿です。彼による「転職しました」というポストを偶然に発見したとき、かなり驚いたのは言うまでもありません。新しい担当者とコンタクトをするために、ずいぶん苦労させられました。
そのほか、送ったはずの商品がなぜか行方不明になってみたり(おそらくクライアントの倉庫のどこかにある)、型番を間違えて注文してきたり(しかも間違いをなかなか認めない)、日本ではおよそ考えられないようなトラブルに巻き込まれる事も…。
そのたびにかなりヒヤヒヤさせられます。まあ、先輩社員に言わせれば「昔はもっとひどかった」との事。これも含めて海外営業の醍醐味なのでしょうね。
新しいことに挑戦するのは悪くない!
さて、ここまで技術職から営業職へ転職した私なりの体験についてご紹介してきました。何か参考になることはありましたか?
一つ言えることは「いくつになっても新しいことに挑戦するのは悪くない」という事です。私が転職したのは35歳を過ぎ、完全なるアラフォーでした。一般的にはこれまでのキャリアを大事にし、それで生きてゆこうと決意する世代です。
>>30代におすすめする転職エージェントと目的別の選び方!転職サイトより転職エージェントを使う理由は?
私自身もそうするつもりでした。けれど「新しいことに挑戦してみたい」という思いを抑えきれなくなり、思い切っての転職となりました。確かに新しいことを覚えるのは大変です。けれどそれ以上に刺激を受けることができましたし、何より新しい世界が開けました。
「挑戦してみたい」という思いがあるのであれば、思い切ってトライしてみてください。やらずに後悔するよりも、やって後悔した方が後の人生に彩りをもたらしてくれるはずです。