零細企業と聞いて、あまり良いイメージを持てないとか、先行き不安な企業という感じがするという人が多くいます。
「うちは零細企業だからさぁ」などというセリフのあとにつづく話題が、暗い内容のものが多いからでしょうか。いえ、それはたまたまです。
実は零細企業の「零細」は、従業員数や資本金など会社の規模についてを指すもので、実際の売り上げや業績に対して零細と言っているのではありません。
今や大企業や安定したビジネスと言われるものがすべて崩壊し始めている時代です。そのため、零細企業で働くと意外にメリットが多いということに気づきます。
ここでは、零細企業の正社員にスポットをあてて、メリットやデメリットについて解説します。転職先の候補の一つに零細企業も加えてみませんか?
零細企業(中小企業)と大企業の働き方の違いとは?
零細企業と大企業の違いは、その働き方にもハッキリとあらわれています。従業員数が少なく、規模が小さいということは、それだけ一人一人の業務の中身が濃くなるという大きな違いです。
なにかと決定を通すまでに時間がかかる大企業とは違い、零細企業では自分で判断してどんどん仕事を進めていく必要があります。つまり、業務にスピードを求められるのです。
また、零細企業には細かなマニュアルなども最初から無いことも多いため、仕事のやり方もその人に任せてくれたりマニュアルそのものの作成を依頼されたりすることもあります。
つまり、製造や営業、技術職などの専門業種で入社しても、顧客対応や事務的な作業もするなど、実に幅広い業務に関わるようになるのが、零細企業の働き方の大きな特徴といえるでしょう。
零細企業に転職して働くメリット
零細企業で働くことには、さまざまなメリットがありますが、その中でも代表的な4つに絞って紹介します。
大企業で働いている人にはほとんど感じることのできないメリットですので、その人の適性によっては抵抗感をもつ部分もあるかもしれませんが、是非その内容をチェックしてみてください。
今の自分が置かれている職場環境と比べながら、零細企業への転職はアリなのかどうかを判断する材料にしてみるといいでしょう。
社長や幹部の考え等を間近で学べる
零細企業で働いていると、社長や幹部などがそばにいたり、実際に従業員と一緒に仕事に取り組んでいたりすることは珍しいことではありません。そのため、大企業にいたときにはロクに顔を合わせることもなかった社長や経営者と直接話す機会が多くなります。
それはつまりどういうことかと言うと、実際にその会社をつくった人の考えや情熱、仕事の仕方を間近で学ぶことができるということです。
経営者の生の声に触れることによって、自分も一緒に会社を動かしているのだと言う意識が高まるきっかけにもなるでしょう。
大企業で働いていると、経営学セミナーなどに大金をはたいて参加する人は少なくありません。しかし、零細企業でもしっかりとしたところを探せば、成功者のすぐそばで経営のノウハウやセンスを働いてお金をもらいながらで学ぶことができます。
歯車の苦痛から逃れられる
大企業に勤めていると「良い会社に入れて安泰だよね」と言われたり、実際に働いていてそう感じたりすることもあるのですが、それは裏を返せば大きな組織の中の歯車の一つでしかない自分を再確認する瞬間でもあります。
多くの人が働く大企業では、業務が細分化されているため自分が行っている仕事の全貌をうかがい知ることが難しく、仕事にやりがいを感じられなくなる人も多いと言われています。
つまり大企業では、自分のやりたい仕事はやらせてもらえないことがほとんどだからです。
そんな歯車人生に疑問を感じていたり、もう逃れたいと苦痛に感じたりしているなら、大企業とは真逆の環境にある零細企業で働くことをおすすめします。
零細企業ならば、入社してさほど年数が経っていない場合でも、流れで仕事を任せてもらえるチャンスが多くやってくるでしょう。業務を円滑に行うためなら、そのやり方が自分のやりたいように変えることだって可能です。
歯車の一部として働くのではなく、自分の力をフルに生かし仕事をしている実感を得たいなら、零細企業への転職を考えてみたほうがよいでしょう。
転勤はあまりありません
多くの支店や営業所を抱える大企業とは違い、その会社数自体が少ない零細企業(ほとんどが1社だけです)には、転勤というものがほとんどありません。
行きたくもない土地に、いつ転勤を言い渡されるかとドキドキして過ごす大企業生活より、同じ土地にしっかり根付いて仕事ができる零細企業の仕事環境はとても魅力的です。
既婚者ならば、転勤がないことはさらにメリットが大きくなります。子どもの転校は大人が思っているよりも大変だからです。
妻のほうも自分の意志ではない引っ越しや、大人になってからの友だちづくりの難しさにストレスが増加し、家庭内の雰囲気が悪くなるなど、転勤がおよぼす影響は想像以上にネガティブなものが大きいのです。
ケースによっては、妻や子と離れて暮らす「単身赴任」を余儀なくされることもあります。零細企業勤めなら、その心配からまるごと開放されるので自分だけでなく家族もストレスが軽減されるのです。
自分の頑張りを評価されやすい
零細企業では、仕事での頑張りを身近で社長や幹部に見てもらえたり、実際に一緒にその業績をつくりあげていくことができたりするので、すぐに評価してもらえるというメリットもあります。
「打てば響く」という言葉があるように、自分が頑張ったことを素早く評価されるとモチベーションがあがるため、仕事にも熱が入るようになります。仕事をすることに手ごたえを感じられるのです。
大企業で働いていると「自分なんていなくても会社は何ごともなく回っている」という意識が強くなりますが、零細企業では自分の頑張りがそのまま反映されやすいので、意識の高さも違ってくるのです。
その評価が高ければその喜びは大きいものでしょうが、逆に低い評価や注意点にたいして指摘してもらえるのも零細企業のメリットだと言えます。
自分の弱点や伸ばすべきポイントも素直に確認することで、自分をさらに成長させることにもつながります。
>>成果を出しても給料の上がらないのなら辞めればいい!給料の上がる会社に転職しないと搾取されてるだけ
外部とのつながりが密になる
大企業ではその内部でいくつもの部署に分かれているため、一つの企業のなかで仕事を行っていくことができます。そうして各部署で行った仕事を会社単位でまとめ、他社とのやりとりをする「会社対会社」の取引をしていくスタイルで運営されています。
しかし零細企業だと、一人一人が幅広い業務を担当して取りまとめているので交渉や取引、普段からの業務でのお付き合いなどが「人対人」の直接的なコミュニケーションになっています。
つまり、会社の外部との接点が密接になるので、企業の中だけの閉鎖的な世界にハマってしまうということが少ないのです。
大企業のほうが、「幅広いネットワーク」とか「世界に羽ばたくグローバル企業」などという壮大なキャッチフレーズこそあれ、中で働く人はそれぞれの仕事をこなしていくためにひたすら社内で頑張り続ける毎日…。
つまり大企業で働く人のほうが、外部とのつながりは意外に少ないということになります。
方針やルールに意見し自分好みの会社に改革できる
零細企業では、そのトップである社長との距離が近いため、大企業と違って意見を直接言える環境になっています。経営について社長が社員の前で語ることも多く、仲良くなれば心を許してくれてさらに深い話を引き出せるようになることもあるでしょう。
仕事で業績を上げていけば、さらにその意見に価値のあるものだと社長が判断するようになり、零細企業で働く中での不満や不便を伝えると改変してもらえる可能性は大きいと言えます。
会社のルールや規定だけでなく、給料などについても話せる関係性の場合「では業績がアップしているから給料も上げよう」と予想外に昇給がかなうこともあります。
しかも、就業規定などがハッキリと定められていない零細企業も多く、昇給に関しても年功序列や勤続年数に関係ありません。
社長の判断で行われるため、零細企業の中には大企業に近いくらいもしくはそれ以上の給与を手にする社員もいるのです。
つまり、零細企業では働いている社員がトップに意見することによって、より働きやすい環境づくりにつながります。働き続けるうちにとても快適な自分好みの会社に改革できていた!という結果にもつながるでしょう。
メンタルが鍛えられて潰しの利く人間になれる
零細企業で働いていると、とにかく幅広くいろいろな業務に取り組まなくてはなりません。簡単なことばかりではなく、うまく立ち回れないこともあるでしょう。時には立ち直れないくらいに凹んでしまうことも多くあります。
そして、零細企業にはネームバリューがないため、取引をしようとする相手からも下に見られてしまったり、営業に行っても話すら聞いてもらえなかったりという心無い態度をされることがよくあります。
しかしそんな経験は決して無駄になるものではありません。メンタルがしっかりと鍛えられるため、辛さに対するハードルが下がっていくのです。そうなるとあらゆることに対応できる潰しの利く人間になれます。
また、零細企業で働くことによって経営のノウハウを自分のモノにしてメンタルも強化されていくと、独立して企業することも実現しやすくなります。大企業にいた人よりも零細企業での経験を生かして独立する人のほうが多いと言われているのです。
>>メンタルを鍛える方法!仕事でメンタル弱いんだよね…と悩んでる人
零細企業に転職して働くデメリット
零細企業で働くメリットについて紹介してきましたが、まったくデメリットがないわけではありません。
簡単にまとめると、次のようなデメリットがあると言われています。
・休日が少なめ
・福利厚生が整っていない
・倒産のリスクが高い
・親族経営などの場合出世は難しい場合も
休日が少なめなのは、一人に対しての業務の幅や量が大企業に比べて圧倒的に多くなるため、勤務時間が長くなったり、休日返上で働く必要が出てきたりするからです。
ただ、その逆も然りで大企業では休日は定められているものの、残業が多かったり、出勤日は異常なくらい忙しかったりする場合もあるため一概に零細企業だけが休めないわけではありません。
>>年間休日105日は労働基準法違反?120日の休日と比較する
>>6連勤、7連勤は違法?過労で倒れる前にブラック企業は辞めろ
>>毎日残業はおかしい!毎日3時間も4時間も残業してるなら辞めろ!
倒産のリスクは、大企業もゼロではありませんが、資金不足から経営が行き詰まってしまうと零細企業の規模の場合倒産リスクは高まってしまいます。倒産しても業務を続行していくための、会社再生法なども零細企業には有効ではないからです。
これらのデメリットが強く出過ぎている零細企業の場合、ブラック企業というとらえ方をされることも多く、実際にブラックな零細企業があることも確かです。
出世が難しい可能性があるというのは、零細企業には親族経営が多いため、幹部や役員などを決める時に、経営者の親族を優先的に採用してしまうことが多いのが理由です。
>>ブラックな同族経営(家族経営・ファミリー企業)の企業に転職(就職)はするな!
経営者の質が問われる零細企業
経営者が仕事に対して真摯に取り組んでいる場合、親族を幹部や役員に採用することにこだわっていないこともあります。その場合、一般社員の中から本当に能力のある人を上の立場に置くので、業績を伸ばして会社を発展させることができるのです。
どんな会社も社長次第という部分はあるものの、零細企業ではとくにその影響が大きく出てしまいます。逆を言えば、大企業の社長よりも人間味にあふれてやる気に満ちた、仕事に誠実な経営者も零細企業の中には数多くいるということになるのです。
零細企業へ転職する価値は十分にある
デメリット面はあるものの、零細企業に転職することで広がる可能性は、それらを上回る価値は十分にあります。なぜなら、日本の企業の9割は零細企業を含む中小企業からなりたっているからです。
それはつまり、零細企業でもホワイト企業と呼ばれているところも多くあるということにつながります。
自分自身にとってやりがいのある仕事に就きたい、歯車の一部で終わりたくない、転勤はできる限りしたくないとなれば、零細企業はかなりの強みが集まった企業なのです。
そこで大切なのは、ホワイト企業の零細企業を見つけることがポイントになります。できるだけ多くのデータから零細企業の情報を集めて、比較検討するようにしましょう。
そして一般の人が転職活動をするとなると、求人広告などから探したりインターネットで企業情報や口コミをチェックしてみたりする人が多いと思います。しかし、残念ながら、零細企業の情報はほとんどネット上では見つかりません。
そこで頼りになるのが転職エージェントです。転職エージェントには公開されていない零細企業の転職情報がしっかりとキープされているほか、ホワイト企業としてその条件などもきちんと開示しているので安心です。