教員になることが幼いころからの夢だった人や、教師の家系など環境の影響で教員になったという人も多いでしょう。
しかしまだ教員になってわずか数年という20代の若さなのに、心も体もボロボロになって、辛過ぎて辞めたくなってしまうという人が後を絶たないという現状があります。
その理由は決して甘えや弱さだけとは限りません。教員を辞めたくなってしまうのには、さまざまな要素が絡み合った深い理由があるのです。
教え子の成長を見ることにやりがいを感じながら頑張りたかったけれど「もう限界!」となってしまったら、自分が壊れてしまうまで頑張らないでください。
教員だけが仕事ではありません。転職という選択もあるのだということを忘れないでほしいのです。
20代の教員(教師)を辞めたい理由
「どんな仕事だって大変だから、弱音を吐かずに頑張らないと!」そう自分に言い聞かせながら、毎日疲れた体にムチ打って仕事を頑張っている自分が目指すのは、どんな教員でしょうか。
どんなに前向きにやっていこうとしても、そんな頑張りがまったく報われないとしたら、体を壊すどころか心までも壊れてしまいます。教員を辞めてしまいたくなってしまう、その理由を確認していきましょう。
薄給激務の教員(教師)
地方などでは、サラリーマンよりも収入が多いイメージがある教員ですが、実際の業務内容を経験してみると、まったく割に合わない給料しかもらえていないことに気づく人も多いでしょう。
小学校教師の平均年収は約360万~400万円、月収換算で29万~33万ほど
中学校教師の平均年収は約335万~408万円、月収換算で30万~34万ほど
高校教師の平均年収は約332万~430万円、月収換算で28万~36万円ほど
つまり教員という仕事は、20代の若手のうちは特に「薄給激務である」という答えになります。公立の学校では年功序列で昇給していくのが一般的ですが、そこまで耐えられないくらいキツイ業務内容だから厄介なのです。
97〜00年に中学バスケ部だった。女バス顧問だった20代女子の数学教師から「土日出勤はほぼボランティア」と聞いてたし、男バス顧問の30前半の理科教師からも「若い教師は死ぬほど給料安い」と聞いてた。彼らが明らかに過労であることは中学生でも気になってた。状況は今でも何も良くなってない
— 西口想 (@100lines) 2015年3月27日
昔と違って生徒たちは週休二日制になりました。でも教師の仕事量は減ったわけではありません。勉強だけを教えていれば良いわけではなく、部活の顧問ともなれば土日も返上で指導しなければなりません。
それどころか、休みの日もテストの採点や問題づくり、校外指導、保護者からのお叱りや教育相談にも対応しなければなりません。生徒からは見えないところで、教員は休みなく働きっぱなしです。
それなのにまわりの人からは、「土日休みでいいね。大人になっても夏休みがタップリあっていいね」などと言われるのですから、やっていられません。
生徒にバカにされる
生徒との関係が原因で、教員を辞めたくなることもあります。それでも小学校低学年の教員ならまだ、先生と生徒の年齢差があるのでマシです。ところが高学年になったとたん、口ごたえや態度が悪い子にカチンとさせられることも多くなります。
そして生徒と教師の年齢差が一気に縮まる中高生では、友達に接するようになれなれしい態度の生徒も出てきます。それがエスカレートすると生徒の方が上から目線になり、教員の荒さがしをして「いじられる」こともあるでしょう。
また、あえて先生を「あおる」態度に出て激怒させ、暴力を振るうように誘導する生徒もいます。暴言を吐いて怒ってしまったら最後、その動画を撮影しSNSにアップするなど悪質な行為に発展しかねません。
ただ、そのような子どもの家庭では親も「先生なんか尊敬に値しない」とか「先生の言うことは聞かなくていい」と言っているケースが多いとも言われています。
教員側が暴言を吐いたり、暴力をふるったりが許されない立場にあることを知っているので、弱い立場の若い教員は特にバカにされることが多くなってしまいます。
保護者による重圧
バカにしたり舐めた態度になったりするのは、生徒だけではありません。生徒の親である保護者にも多くのクセモノがいます。特に中・高・大学受験の年齢の子をうけ持っていると「受験の時期」を機会に若い教員にかみつく親が出てきます。
「こんな若い先生に任せておけない。受験に失敗したらどうする!?ベテラン教師に替えろ」などと言ってきたりする、いわゆるモンスターペアレントという人たちです。
[box class=”box_style_gray” title=”モンスターペアレントの特徴”]
・我が子の言い分がすべて=子どもに振り回されてクレーマーになる
・なにもかも学校に丸投げ=しつけも学校でやってくれというスタンス
・権利主張型=とにかく何が何でもすべて、自分の思い通りにしたい
[/box]
そんなクレイジーなモンスターたちの攻撃は、まっさきに言いやすい若手教員のところに集まります。じつはベテランの教師であっても、こんな保護者たちには手を焼いていますが…。
まだ経験値の少ない若い教員ならば、精神的にも肉体的にも重圧を感じ、追い詰められてしまっても無理はありません。
若い教員(教師)は雑用係ではありません
教員の世界は、他の業界に比べて上下関係がハッキリとしています。昔ながらのタテ社会がそのまま受け継がれているのです。
ベテランが幅を利かせており、若い教員が入ってくると、ここぞとばかりに面倒な仕事や肉体労働的な業務などの雑用を押し付けます。
「若いんだから何でも経験だよ」などとうまいことを言われ、断れない立場の弱さを利用されて、気づけばものすごい仕事量を背負い込んでしまうことになるのです。
そんな薄給激務の若手を残し、高給取りのベテラン教員たちはサッサと帰ってしまいます。希望をもって教員になったのに、一体自分は何をやっているんだ…と終わらない雑用をこなしながら、職員室で残業する日々が続きます。
>>消防士を辞めたい理由!消防士から他業種に転職するには
同じような感じの消防士さんも大変な感じですよね…
教員(教師)同士によるイジメ
学校でのいじめ問題が深刻化していることは良く知られています。しかしそれは生徒間だけのことではありません。じつは先生同士の人間関係こそ、とてもドロドロしているのです。
生徒に「いじめはダメ、絶対」などと指導しているのに、自分たちの方がよっぽど険悪な関係なのですから、なかなかいじめが解決しないのもわかる気がします。
そんな先生同士のイジメの原因となるのは、お互いの学歴や能力をめぐっての嫉妬や派閥争いなど、フタを開けてみればひどく大人げなく、じつにつまらないものです。
そして、若い教員を育てるための教員数に余裕がないという状況も、このようないじめにつながっています。余裕がないから職員室全体にピリピリした空気が充満し、わからないことを質問しただけで、暴言を吐かれるなどのイジメが発生してしまうのです。
>>職場のイジメで孤立被害に悩んでる人!陰湿なイジメ対策10選
教員(教師)に多いうつ病&うつ病予備軍
これまで述べてきたような過酷な環境下にいる20代の教員には、うつ病患者や予備軍が多いことでも知られています。劣悪な人間関係や言うことを聞かない生徒に毎日関わって休む時間もないのでは、ノイローゼ状態になるのも無理はないでしょう。
画像引用元:http://web.kyoto-inet.or.jp/people/bankyu/education.htm
うつ病になると朝起きられなくなったり、体が動かず学校に行けなくなったり、何もしていないのに涙があふれ出すなど、とても危険な状態になってしまいます。
ところが、まわりからはサボっているとしか見てもらえないケースも多く、酷い場合には自殺に追い込まれてしまう人も少なくありません。
20代という若い教員の場合、生徒、教員同士、保護者というあらゆる人間関係の板挟みになりやすく、しかも休日返上で仕事漬けの毎日になるため、自分の時間がないことも「うつ」につながる原因です。
東京都の市立小学校の新任女性教師が2006年に自殺。保護者対応や残業が原因とみられ、2016年、遺族が起こした裁判により、公務災害申請が認められた。同じ2006年、新宿区でも新任女性教師が「全て私の無能さが原因です」という遺書を残し自殺。2010年に公務災害認定された。
2010年には、埼玉県の市立小学校に勤務していた女性教師が保護者に対し、いわれのない中傷を受け、不眠症になるなどの被害を受けたとして慰謝料500万円を求め裁判に。2011年にも、神奈川県内の市立小学校に勤務していた女性教師が保護者に対し、名誉毀損及び損害賠償を求め裁判に。
合わない仕事にしがみついて精神疾患になると、立て直すまでにはかなりの時間を要します。そうなってしまう前にさっさと転職してしまったほうが身のためです。もっと自分を大切にしましょう。
20代教員(教師)の転職事情
あまりにも辛過ぎる教員生活からは、思い切って抜け出してしまうのもよい選択です。それでも教員になることにこだわりが強かった人の場合は、転職することを選択するのは気持ち的に苦しいかもしれません。
ただ20代で教員を辞めてからの転職が難しいのかというと、その答えはNOです。ポテンシャル採用される可能性が高い年代なのだということを知っておきましょう。
ポテンシャルという言葉には潜在的な力とか将来性、その人が持つ将来への可能性という意味があります。30代よりも圧倒的にポテンシャルが高いと評価されるのが20代です。
20代での教員からの転職を考える人は、どっぷりと教員生活に染まりきっていません。そのため、いくらでも新しい分野に対応できる柔軟性があります。一つの職種に絞り込み過ぎずに選択肢を広げていけば、さらに転職はスムーズに進みます。
つまり、企業が求めているのは「スキルよりもポテンシャル」です。いろいろなスキルを身に着けていても、ポテンシャルが低ければ一緒に仕事をするのは難しい相手だと感じられてしまうからです。
そして気になる給与面では、20代での転職ならもっと高収入の仕事を狙うことも可能です。転職はしたいけど収入が下がるのは嫌だという20代の教員は、高収入な企業への転職にトライしてみましょう。
20代教員(教師)からの転職先としておすすめの職種・業界
教員という職業に就いていたのが短い期間だったとしても、自分で思っている以上にさまざまなスキルが身に付いているものです。そんな教員経験を生かした転職先にふさわしい職種や業界を紹介します。
塾講師、塾の運営管理
教員という経験を最大限に生かせるのは、教育関連業界への転職です。塾や予備校の講師、運営や事務スタッフなどの業務があります。生徒の指導はもうやりたくないと感じているなら、学習教材の編集者や営業なども良いでしょう。
塾や予備校は、これまで授業で生徒に勉強を教えてきた経験が生かされる場ですが、中には「また生徒は言うことを聞いてくれないのではないだろうか」という不安を持つ人もいるかもしれません。
しかし塾に来る生徒の多くは、勉強を「したくて」通っているので、教員として勉強を指導していた生徒とはまったく質が違います。成績を上げたい、勉強の苦手を克服したいという本気の生徒たちを教えるのは、やりがいを感じられることでしょう。
ただ、塾や予備校の講師にも、生徒やそこに通う親とのコミュニケーション能力は必要です。学校という現場でそんなやり取りを日常的にこなしてきた教員ならば、塾での対応の方が楽に感じられるかもしれません。
介護業界
介護業界では、まだまだ人員が大幅に足りないことに加え、募集の数も多いためスムーズに転職活動が行えます。しかし教員とはまったくの異業種になるので、勤まるかどうか不安だと感じる人も多いかもしれません。
介護業界では体力はもちろんのこと、思いのほかコミュニケーション能力が必要になります。教員として子どもと関わる仕事をしてきた人は、奉仕の精神や献身的な対応力が身についている人が多いです。そのため介護業界に合っていると言えるでしょう。
また、介護職=ヘルパーのような食事やお風呂の介助など、肉体労働の多い業務内容で知られていますが、教員の経験を生かして福祉事務所の現業員をめざすという方法もあります。
福祉事務所の現場員とは、家庭訪問や面談、生活指導などをする資格をもった職員のことです。まだ若い20代の教員ならば介護業界に入った場合でも、その中でスキルアップして安定した業務に就くことを目指せます。
大手企業の事務職や高収入の外資系企業
休日が少なく、プライベートな時間でも生徒や親への対応に追われる教員という仕事は、まだまだ遊びたい気持ちのある20代には、とても辛く感じられるものです。
休日返上で働かなければならない教員は、恋人を作っても交際を続けていくことが難しいなど、大切なプライベートがまっさきに犠牲になります。それでは自分の将来設計にも影響が出てしまうのではないでしょうか。
そんな教員を辞めて転職するなら、大手企業の事務職や年収の高い外資系企業を狙ってみるのも良いでしょう。 少しハードルの高そうな企業でも、休日が多ければ仕事を頑張れるというのであれば、思い切ってチャレンジしてみることをおすすめします。
>>実力主義の会社へ転職をするメリットデメリットは?実力主義なら外資系?
教員の仕事に限界を感じたとき、それは新しいステージへのステップアップの始まりなのかもしれません。