経営部門がおかしかった病院の話

転職体験談

「いい職場、そう思ったのは最初だけ…」

最初に勤めた病院を寿退職し、しばらくは主婦をしていました。

不妊治療中でしたので、日勤だけの看護師に復帰して家計を助けようと思いました。

転職サイトに登録し、すぐコンサルトさんから提案が来たのがその職場でした。

残業は少なく、これから妊娠・出産育児を考えているならオススメ、ということで興味を持ったんです。

転職サイトが初めてということもあり、よくリサーチもせずに申し込むことにしました。それが今回の失敗の元です。

これから転職を考える人にお伝えしたいのは、求人を提案された時、自分でもネットでリサーチすることの重要性です。

今回は、現場は申し分なかったのに、経営部門とのやりとりで退職してしまった体験をお話しします。

こんなことで退職することになるなんて

いい職場に恵まれた、そう思って疑わなかった

面接の時に、不妊治療中であることを正直にお伝えした上での採用でした。

配属された部署では、家庭や体を気遣ってくれるスタッフに囲まれ、「復帰してよかった」と心底思いました。

不妊治療を経てやっとの妊娠

そんな折、微熱が続き、妊娠検査薬を使ってみたところ、陽性反応がありました。

まだ入職して間もない頃のことで、嬉しい気持ちの反面、心苦しく思いました。

でも、上司は「よかったね。治療が報われたね!」と温かい言葉をかけてくれました。

念のため、経営管理部の人事にも報告しました。

人事「えっ…仕事はどうするんですか。続けるんですか?」

言い方に引っかかりを感じましたが、この時は想像だにしませんでした。この人事含む経営チームの無知と怠慢で足をすくわれることになるとは。

院長、院長、院長…ばかりで無能な経営チーム

つわりもありましたが、仕事は妊娠前と変わらずこなすことができました。安定期に入り、産休の手続きを確認するため人事に行きました。

人事「育休は就職してまだ一年経っていないのでありません。時短勤務は2時間まで可能です」

私「分かりました。産休明けから時短勤務でお願いします。」

申請書類を渡されたので、提出しました。ふと疑問に思い質問しました。

私「育休が取れないのは分かりましたが、入職後一年たったら申請できますか?」

人事「…前例がないので院長に聞かないと…」

私「すみません、就業規則を見せてくださいますか?」

就業規則には、
・一年未満の職員は育休はとれない
・一年を満たしても、配偶者が育児できる状態なら取得不可
と記載がありました。

私「この規則では、1年たったら申請条件を満たせるようですが」

人事「院長に聞かないと…」

院長を連呼する人事を、不審に思い始めました。

私「私から労務の方に直接お伺いしてもよろしいでしょうか?」

人事「私から伝えておきます。回答をお待ちください」

とりあえず労務の回答を待つことに。
この時、まさか労務も無知とは夢にも思いませんでした。

労務からの回答はもっとおかしかった

その後、私もアテにしなくなっていたので忘れかけていました。

というのも、厚労省下の雇用環境・均等部に匿名で相談し、ウラをとっていたからです。

2016年時点の法律では、雇用1年未満の職員が妊娠したら、1年経つまでは育休の申請は雇用側は拒否できますが、1年たったら拒否できません。

労務の担当者は、法律の専門家と聞いていたので安心していたんです。ところが…。

労務「一度復帰したら、雇用1年たっても育休は申請できません。”復帰できる環境にあるため育休は不要”と見なされるからです」

私「私も調べてみたのですが、法律上は申請できるようです。申し訳ないのですが、ご確認いただけますか?」

一週間後、人事から面談の通達がありました。

人事「ご納得いただけていないようなので、院長にも報告し面談を設けさせていただきました。なんでも聞いてください」

私「現在の法律をご確認いただきましたか?」

労務「いいえ。ただまぁ、私も法律家の端くれですので分かりますよ」

私「(本当か? 言質とっとこ)復帰できる環境にあると、育休申請可能な条件を満たしていても病院は拒否できる、ということでしたが…」

人事・労務「はい、その通りです」

私「それが就業規則に書かれていないのは何故ですか?」

労務「書かれていなくても、病院で決まったことは職員に拘束力があるんですよ」

私「えっ、法律の方が優先されるんじゃないんですか?」

労務「いや、そこは現場が優先されるんです。それに法律って解釈は人によって違うものなんですし」

私「それが決まりで拘束力のあるものなのですか…?」

労務「そうなんです。お気持ちは分かりますが」

私「ところで、この就業規則は平成18年に作られたものですね。その後、法改正がありましたが、これから反映されるということでしょうか」

労務「それも院長に確認します」

この面談はここで終了。院長、院長というだけで、確実なソースに当たらない人事・労務に不信感が募るばかりでした。

この人事・労務とのやり取りはかなりストレスで、お腹も面談後には張りがちに。

「産後また連絡すればいいや」
この面談前に、雇用環境・均等部、ハローワークにも以下を確認していたので、どこか楽観的でした。

・労務・人事の回答は法律に則っていない
・1年経ったら育休は申請できる、ただし、給付金はでない

さらに、就業規則が法改正を反映しておらず、法律を下回った内容であること、就業規則を職員が閲覧できる状態ではないこと等、就業規則周りの問題を指摘されました。

この病院、ちょっとおかしいかも…。そう思いつつ、産休に入りました。

産後は、経営チームの無知と怠慢が余計に分かっただけ

無事出産し人事へ連絡しました。すると…

人事「時短勤務ができない規則になりました。それと、育休については何度も説明した通り申請できませんので」

時短は申請書も出したのに、産後の今になってなぜ?それに、やはり法律を確認していない…

憤りが湧いてきましたがぐっとこらえ、

私「仮に時短勤務ができないなら、育児時間を勤務の前後につけたいんですが」

人事「育児時間の元々の意味からはずれるのでNGです」

産後のボロボロの身体で、雇用環境・均等部に連絡し人事の対応の相談、また、育児時間について労基署に確認。

労基署には、育児時間を勤務の前後に付けることなどは全て問題ない、通達が行っているはずですが…と言われました。

知識もない、法律への意識も低い経営チームに呆れました。

遠回しなやり方ではラチがあかないと、労務・人事に
「雇用環境・均等部、労基署に匿名で確認済みです。このままだと私も不利益をこうむるが、病院が法律違反となる可能性があります。至急法律を確認して下さい」
と電話で伝えました。

すると、「詳しく面談で話し合いたい」と希望日時を聞くので、産後1ヶ月が経ち息子を預けられる日時を伝えました。

すると、「担当者が集まれるのがX日なので変えて欲しい。赤ちゃんは連れてきてくれていいから」というのです。

産後の不安定な心身を抱え、まだ新生児の息子を電車に乗せろと?

この対応に、精神的にも身体的にも追い詰められていきました。職員満足を掲げ、コンプライアンス遵守を宣言している病院なのに…。

待遇は良かったんです。しかし、この人事・労務管理があまりにもお粗末でした。

それに、曲がりなりにも病院のスタッフとして、この母子への対応はありえないと怒りを通り越して呆れるばかりでした。

確かに、私自身が1年も在籍しておらず、病院に充分貢献しているとはいえない状況です。でも、この管理のずさんさや無知はそれとは別。

一応、指定された日に面談に行きました。産後でまだ痛みの残る身体、月齢1ヶ月にも満たない息子を連れての外出…辛かったです。

何とかたどり着いた面談室。人事部、看護部のお偉いさんと事務の6名が遅れてやってきました。

それは、面談という名のマタハラでした。

「仕事やめたら?」
「パートになるっていう手もある」
「子供がかわいそうじゃない?」

私の立場に立つ人はゼロ。
しかも、法律をしかるべきソースで確認した人もゼロ。

しまいに
「こんな小さな赤ちゃん連れて外出していいの?」

いや、そちらが日時の変更をしてきたんでしょうに。お偉方がこれか…。

自由診療で今は儲けているけど、病院自体がものすごくヤバイんじゃないか?と思いました。

そんな折、息子が急に体調を崩しました。この病院とのやりとりのしわよせが、子供にきてしまったのです。

救急車の中で、ぐったりしている息子を抱え、夫の手を握り「もう仕事やめる」と自然と口をつきました。夫も、それがいい、と一言。

電話で退職を告げ、書類の手続きが済んだ後、経営チームのリーダーから「あなたの希望通りの勤務が可能となりました。今となっては残念ですが」と連絡がありました。

本来なら、これほどの労力を使わず、家族と協力しあって復帰したはずが…もう遅かったです。

院長と看護部長が謝罪に来たいと言って来ましたが、丁重にお断りしました。

こうして退職することになりました。
労基署と雇用環境・均等部にお礼方々、顛末と病院名を報告して…。

待遇だけは良い地雷案件もある

勉強になったとしか言えない

退職した後、現場のスタッフが次々と退職・転職していったこと聞きました。私だけではなく、現場スタッフに見限られる運命の病院だったようです。

私は、しばらく子育てに専念し、8ヶ月後に別なクリニックに就職しました。

例の病院は、あれ以来ずっと求人が出ています。行政指導の対象らしいですが、その後どうなったかは分かりません。

転職コンサルトさんに、条件が良い求人を紹介されたら、求人がいつも出ている案件じゃないか調べ、もしそうなら必ず理由を確認した方が良いですよ。

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