介護職は、数多くある仕事の中でも特に過酷な仕事です。お年寄りに寄り添い、生活をサポートする素晴らしい仕事である一方、重労働でありながら給料はそれほど多くないというのは、世間でも認知されているほどです。
介護の現場では肉体的な辛さに加えて、人間関係や勤務時間の不規則さや長さにストレスを感じている人も多く、常に転職を頭の片隅に置きながら仕事をしている人も多いでしょう。
そんな介護職に就いていて、そろそろ限界かもしれないと感じているあなたへ。介護職を辞めたくなる理由と、転職する際のポイントをご紹介します。
無理を続けていると、ストレスや過労で取り返しのつかないことになる場合もあります。そうなる前に、現状を把握し環境を変える第一歩を、ここで踏み出してください。
介護職(介護士)を辞めたいと思う理由
介護職を辞めたいと思っているのは、あなただけではありません。多くの介護士たちが、介護の仕事に疲れ転職を考えています。
ただ、辛いからといって衝動的に退職すると後悔する可能性が高くなります。現状を冷静に把握して、今抱えている問題が解決されないと理解できてから、転職に動き出しましょう。
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ここでは、介護職を辞めたくなる理由の代表的なものをいくつかまとめました。あなたが現在抱えている悩みを振り返りながら、一緒に見てみましょう。同じような悩みを他の人たちも抱えていないかチェックして、転職を考えるきっかけにしてください。
狭い職場ならではの嫌な人間関係
どの仕事でも、退職する理由の原因でダントツに多いのが、人間関係のストレスです。もちろん、介護職の場合も同じで、人間関係が嫌になって辞めたいとおもう人はたくさんいます。
あなたが辞めたいと思っている原因が人間関係であれば、同じように悩んでいる人はたくさんいるので安心してください。具体的に、介護職ではどのような人間関係の悩みがあるのか見てみましょう。
人間関係の悪化の原因
介護職は、限られた施設の中で少数のチームで動くため、性格の合わない人がいるとストレスが溜まりやすくなります。仕事もオーバーワークであることが多く、上司でも同僚でも自分の業務をこなすのに精一杯で、他のスタッフをサポートする余裕がないのが現状です。
また、閉鎖的な環境ではセクハラやパワハラも増える傾向にあるので、こうしたことも人間関係を悪化させる原因になります。
どんなに過酷な仕事でも、人間関係が円滑であれば、それほどストレスにはなりません。しかし、介護の現場では人手不足からくる忙しさや仕事のハードさもあって、理想通りの人間関係を築けないことが多いのです。
入所者やその家族との人間関係
介護職の場合、同僚や上司との関係だけではなく、入所者やその家族との人間関係もストレスの原因になります。
入所者からサービスが悪いと怒られることもありますし、他のスタッフと比較されダメ出しをされることもあります。また、入所者の家族から理不尽なクレームが入ることでストレスを感じることも少なくありません。
スタッフとの人間関係だけでなく、利用者との人間関係も悪化すると、仕事に意味を見い出せなくなってしまいます。
仕事内容と給料の乖離
介護職は、とにかく仕事内容がハードです。肉体的なハードさだけではなく、人を相手にしているので、精神的な辛さを感じる場面もたくさんあります。ハードな仕事に対して、満足できるだけの給料をもらえるのであれば納得できますが、薄給であることがさらにストレスを大きくする原因になります。
施設によって給料に違いがあるほか、常勤か非常勤かなどの働き方でも給料に差が出ます。介護職員の給料の相場としては、常勤で月給制の場合は平均25~30万円ほどで、地域によってはもっと安い場合もあります。
金額だけ見ると、薄給と言うほどではないように感じますが、この給料にしては仕事の内容がハードすぎるので、介護職を辞めたくなるのはおかしなことではありません。
また、残業が多いのも介護職の特徴ですが、残業代がしっかり支払われない施設が多いのが現実です。
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過労による体力の限界
介護職は、現在慢性的な人手不足の状態にあります。スタッフのほとんどがオーバーワークを強いられており、ゆっくり休憩する時間がない施設はたくさんあります。次から次とやってくる仕事に、体力的に限界を感じると転職が頭をよぎり始めます。
また、介護職は腰に負担がかかりやすいので、腰痛に悩まされて辞める人もたくさんいます。ひどくなると、お給料のほとんどを体のケアのための、病院や整骨院に使い、何のために仕事をしているのか分からなくなる人もいます。
せっかくの帰宅後や休日の時間を、疲労や体の痛みでつぶされてしまうのは、とても辛いものです。疲れや痛みは、気力だけではどうしても乗り切れないものなので、限界を感じると介護職を辞めたいと思うようになります。
理想と現実のギャップ
理想と現実のギャップはどんな仕事でもありますが、介護職も例外ではありません。
お年寄りが好きで、生活をサポートできる素晴らしい仕事という理想を抱いて就職したものの、利用者から暴言を浴びせられたり、理不尽なクレームを言われたりと、現実はかなり違ったものになることも多々あります。
チームで協力し合って厳しい仕事を乗り切れると思っていたら、スタッフ同士はギスギスしているということもざらです。
このような理想と現実のギャップは、仕事を辞めたいと思うのにじゅうぶんな理由になります。感謝されてもいいはずが、仕事だからやって当たり前と、利用者の家族からも雑な扱いを受けると、とても続けていく気にはなれません。
シフトの問題
介護職は、勤務時間が長い、休日が計画的に取りにくい、残業が多いといった問題があります。人が相手の仕事は、日曜や祭日だからといって休むことができないので、家族とのコミュニケーションが取れない人や、友達と休日が合わずストレスを抱える人もいます。
また、深夜勤務が多いのも問題です。独身者なら自由はききまずが出会いを妨げ、結婚が遅れるというデメリットにつながります。
家族がいる場合は、深夜勤務が頻繁にあると家族と過ごす時間がなくなります。最悪の場合は、家庭不和や離婚などにつながるケースもあります。
自分の時間が持てないシフトは、単にキツイというだけではなく、日常生活やあなたの人生にも悪影響を及ぼすので軽視できません。
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違法な医療行為を強要されている
本来、医療行為が行えるのは看護師など有資格者のみです。しかし、近年ようやく「医療行為ではないもの」を厚労省が示したことで、介護士でもできる医療的ケアが増えました。
例えば、爪切りや湿布を貼るという行為だけでも、これまで医療行為とされており、資格を持っていない介護士はやってはいけないことになっていました。法改定以降できる医療的ケアが増えたとはいえ、介護職には認められていない医療行為はたくさんあります。
施設によっては、「やってはいけない医療行為」を、人員不足などを理由に介護士にやるよう強要するところがあります。痰(たん)の吸引や薬の服用に関する判断などは、有資格者もしくは研修を終了した介護士しかやってはいけない行為ですが、上司からやれと言われると資格を持っていなくても断われず、嫌々やってしまう介護士もたくさんいます。
これまで、介護士が違法な医療行為を行い書類送検された例もあるので、違法なことを強要されるのが嫌で辞めたくなる人もいます。
介護職(介護士)を辞めたいと思ったら転職あるのみ
現在働いている介護職を辞めたいと思ったら、早めに転職を考えた方が賢明です。特に、精神的に追い詰められている人や、体に異常をきたしている人は、我慢して続けていると悪化し、仕事をすること自体難しくなることもあります。
とはいえ、やみ雲に転職するのはおすすめできません。あなたの負担を最小限に抑え、賢くスムーズに転職できる方法を見てみましょう。
より条件の良い施設に転職する
介護職の経験が長い人や、介護職自体は好きでやりがいを感じている人は、同じ業界内での転職がおすすめです。業界自体は、慢性的な人手不足の状態が続いているので、転職先は他の業界に比べて見つけやすいでしょう。
施設が変われば、あなたが感じていたストレスが軽減されたり、人間関係の悩みがなくなったりすることもあります。また、給料がアップすれば多少のストレスは気にならなくなるというケースも考えられます。
今後、海外労働者の受け入れが進むと、介護業界にも変化が出てくるはずです。その前に、あなたに合った施設を探し、働きやすい環境を整えておくことが大切です。同業種へ転職したいなら、これからご紹介するポイントも押さえておきましょう。
介護職で働くメリット
介護の現場では、仕事以外での悩みが多く、介護という仕事そのものは好きという人がたくさんいます。実際、利用者に感謝されやりがいを感じる仕事なだけに、あなたも他のストレスがなくなれば、そのまま介護職を続けたいと思っているのではないでしょうか?
介護職を続けるメリットとしては、次のようなものがあります。
- 今後も必要とされる職種で、長期に渡り安定して働ける
- 一生使えるスキルが身に付く
- 資格取得によりスキルアップや昇進が見込める
- キャリアを積めばブランクができても再就職しやすい
女性でも、資格取得やキャリアを積むことで、昇進や昇給が見込める仕事ですし、家庭の事情でブランクが空いても、業界自体が常に人手不足の状態なので再就職がしやすいのも魅力です。
介護の技術を身に着ければ、両親やパートナーの介護が必要になったときにも有利ですし、さまざまなスタイルの働き方ができる介護の現場では、自分のライフスタイルに合わせた勤務体系を選択できるのも嬉しいポイントです。
転職を機に、あなたが理想としている働き方ができる施設を探してみてください。
転職時には注意する!ダメな介護施設の特徴
同じ業界内で転職する際には、できるだけ働きやすい職場を見つけることが最大の課題になります。次のような職場は避け、できるだけストレスのない施設を見つけてください。
- スタッフの顔に覇気がない
- 残業や休日出勤が当たり前のように行われている(持ち帰りの仕事が多い)
- セクハラやパワハラ、いじめなどがある
- 夜勤の日数が多い
- 給料が相場以下で昇給も見込めない
- 違法な医療行為を強要される
>>仕事を持ち帰り残業するのは辛いですよね!家で仕事をするデメリット
現在、あなたが働いている職場が上記に当てはまる場合は、早めに転職を検討しましょう。また、転職先を探す場合は、実際に働いている人や口コミを積極的に集めて、上記に該当する項目のない施設を探してください。
転職先の情報がなければ、実際に働いているスタッフの表情を確認して、ストレスを感じる職場ではないか、慎重に判断することが大切です。面倒かもしれませんが、転職を検討している施設があれば、実際に施設に出向きスタッフや利用者の動きや表情を確認することも必要です。
介護職が無理なら他の業界に転職する
人間関係や勤務体系、給料が嫌なのではなく、介護という仕事自体に限界を感じているのであれば、他の業界に転職することを検討しなくてはいけません。
介護職は特殊な業界のため、他業種へ転職する際にはスキルを活かすことが難しいのが現実です。しかし、それを踏まえた上で、固い信念と目標があれば異業種への転職を成功させることはじゅうぶん可能です。
介護職からは、次のような転職先がおすすめです。
- 一般事務の他、医療や介護施設の事務
- 営業職
- 販売
- サービス業
- 保育士
- 家事代行業・シッター業
過酷な労働環境で働いている場合は難しいかもしれませんが、現在の職場にいながら転職に有利な資格をとるのもおすすめです。あなたが就きたい職業に有利になる資格を調べて、今のうちから勉強を始めてみましょう。
辞めるタイミングは計画的に!
介護職が嫌になって転職を考え始めたら、まずは転職までの計画を立てるようにしましょう。無計画に辞めてしまうと、次の職が見つからずもっと条件の悪い職場で働くことにもなりかねません。
現在の職場で働きながらできる転職の準備には、次のようなことがあります。
- 転職したい業界や施設の情報収集
- 資格取得や必要なスキルの勉強
- 最低3か月生活できるだけの貯金
- 理想の職場や人生を明確に設定する
- 転職までのスケジュールを立てる
- 転職のプロを探して相談する
今の職場から逃げたい一心で、準備もせずに他の職場を探しても、条件の良い所を見つけるのは難しいでしょう。前向きに上記の準備をしていく過程では、自分がどんな職場で働きたいかが明確になっていきます。
転職を成功させるには、事前の準備は必要不可欠。今の職場に限界を感じていれば、今日からでも転職の準備を始めて、計画的に転職しイキイキと働ける職場に出会ってください。